秘密な基地
戻るには…
「やっぱり、
 じいちゃんの
 言っていた絨毯の話…。」

タケシは、夜道を
歩きながらずっと
気になっていました。
あの絨毯で眠ると、
色々な世界に行ける
という不思議な話を…。
結局皆、そんな話は
インチキだと言っていましたが、
タケシはその話、
正に自分の身に
起きている事なのでは
ないかと思うしかありません。
体験者は、
二百年前の世界に
行ったという話からも、
色々な世界というのは、
自分がここへ来たように、
過去にタイムスリップする
事なのではないのかと…。

 この三十年前の
世界に来る前、
タケシは父の死に
深く傷付き、
父への深い思いを
抱きながら、
あの洞穴の絨毯の上で
寝てしまいました。
そして、その気持ちを
包む、自然の暖かな強い風、
その時も、
フェーン現象が発生し、
高温の強い乾燥風が
吹き荒れ、町でも、
火事が起きた程です。
その風が、
あの洞穴の、絨毯で
寝ているタケシを包み込み、
タケシを三十年前の
世界へといざなった
という事になります。

 この三十年前の今日も、
フェーン現象が
吹き荒れていると、
ラジオで言っていました。
おそらく、洞窟内で
高温の乾燥風が
吹くという
同じ条件下であった為、
三十年前の
この日にタイムスリップ
したのでしょう。
という事は、
またあの洞穴の
秘密基地に帰って、
絨毯で寝てみよう。
そうすれば、
また同じ条件下である、
三十年後の現代に
戻れるんじゃないか、
そう考えました。
タケシは、
秘密基地に戻るなり、
また絨毯の上に横になりました。
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