恋の唄


それから校舎に入って廊下で伊織ちゃんと別れて教室に足を踏み入れる。

今日から私が一年間お世話になる教室だ。

自分の出席番号の書かれた席に鞄を置くと、一年の時に同じクラスだった友人に声をかけられ「また一緒だね」と会話を交わす。

一応気になって教室内を見回すと、華原君は私の席から少し離れた自分の席に座っていた。

座る彼の前には真柴君が立っていて、二人は口元に笑みを浮かべながら楽しそうに話している。

と、体勢を変えようと動いた華原君と目が合ってしまった。

驚いて慌てて視線を反らしてしまった私。

けれど、よくよく考えたらそれって失礼だったんじゃないかと思った私は、少しの罪悪感と葛藤し、また視線を華原君に戻してみると……


彼の瞳は、私を捉えたままだった。


< 10 / 204 >

この作品をシェア

pagetop