恋の唄
「今の全てを、残せたらいいのに」
思わず口にすると、華原君が私を見た気配を感じた。
それに応えるように私も視線を花火から華原君に移すと……
花火の放つ光に彩られた華原君が微笑んでいた。
「残して行こうぜ」
「え?」
「忘れないように、来年も一緒にここで見るんだよ」
二人で。
続けて言って、華原君は再び花火に視線を向けた。
当然の如く脳裏に過ぎる存在。
それが私を責める。
「……ダメ、だよ」
「結衣?」
華原君が私を見つめて、それが凄く苦しくなって俯いてしまった。