恋の唄


「何?」


自分の左側にいる彼に視線を送る。

華原君は左肘を机について、その手を頬に当てながら私を見ていた。

開け放たれていた窓から入り込んだ緩やかな風が、華原君の茶色くて柔らかそうな髪を揺らす。

それとは逆に、揺れる事無く真っ直ぐに私の姿を捉えている彼の瞳。

その下方にある形のいい唇が動く。


「下の名前、何てーの?」

「結衣、だけど」

「ふーん……結衣、ね。まぁ、そんなイメージだな」


……どんなよ。

彼は自分の中で話を完結させたらしく、私から視線を反らして前を向くと携帯電話を取り出して操作を始める。

もう、完璧に私には興味を無くしたかのように。



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