恋の唄


だったらこの間の言葉は何だったのだろう。

やっぱり私が都合のいいように考えてしまっていただけなの?


考えれば考えるほど心に重いものが圧し掛かっていく。

気持ちが沈むと知らない間に顔まで俯いてしまって……


不安で気持ちがゴチャゴチャになって行く中、華原君が私を呼んだ。


「悪い、今から行かないとヤバイとこ出来たから走って行くわ」


ゴメンな。
謝る華原君に私は首を横に振る。


「いいよ。転ばないように気をつけてね」


冗談めかしに笑って言えば、華原君は「結衣じゃあるまいし」と笑ってくれた。

走り出した彼の背中を立ち止まったまま見送る。



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