アズライト

花火と異国人

− 十輪田湖花火大会 −

十輪田湖の夏を告げる祭


湖畔ではミッドナイトライヴが始まって賑やかだ

湖上には、鮮やかなイルミネーションに飾られた遊覧船が浮かんでいる

もう少しするとカーニバル船から、花火が打ち上げられる予定だ



「では、少し約束があるので
そろそろ失礼します」

「いやー 淳君
お父様によろしくお伝えください」

「はい」



やっとの事で
実行委員のお偉方の群れから抜け出す

次々とつがれる酒と
人の熱気で、少し酔った

出店が並ぶ湖前の広場
カップルや家族連れで、ベンチが埋まっている



木陰のあまり目立たない場所に
空いているベンチが見えた




ゆっくり腰を下ろし
少し着物の襟を指で緩める
「はー… 」


ここは薄暗くて、出店のある人波が明るい

−父親におんぶされた子供がつけている
星の触角が付いたカチューシャ

RELIEFでのあれを思い出して
笑ってしまった

「あ
いちご煮の名前の由来聞くの忘れた…」



− 水が飲みたくなって
席を立つ



人波を渡ろうとして、避け切れず、ぶつかった
「すみません」



「……淳!!」
「淳!」



「ん? 」



手を繋いだ浴衣のカップル
よく見るとそれは

西とアキだった







−「二人が付き合うとは
思わなかったな」

西の腹を軽く打つ



「わはは いや〜…
淳に謝ろうと相談してるうちに…」

「うん なんか可愛くなっちゃって… 」


二人は照れ臭そうに笑う




「二人共いい奴だし
俺もなんか嬉しいよ 」


「そう言って貰うと嬉しいっつか…うん 淳 俺 」



「あの時の事はもう怒ってないよ 」



「サンキュ…」




携帯が振動した

珍しくアズから着信




ピッ
「なにした? 」






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