アズライト




「忘れてって
伝言した事…

怒ってる……?


私が…どこの誰かなんて
話してなかったけど


…淳が
淳は、もしかしたら…って


…そう…思ってた」








「…お母さんにはよ
お前 あったのか」



「うん…

長くオフの時期あったよね
11日間?


あの頃お父さんから…
お母さんが見つかったよって…


温泉郷の病院に入ってるって
会って怒ってやろうと思ったら
私の事なんか忘れてた



なんか
ぼーっとしてて…
ひどい貧血起こして、転んで
骨折った」


「…ドジ」


「うん…

…でも、最後の頃には
一瞬だけ
私の事思い出してくれて…

『お前はお前の好きな道を
行きなさい』って…
そう言ってくれた


…お父さんも応援するよって


私ずっと歌いたかった
でも
−自信なんかなくて…


でも頑張りたくて
『これが自分だ!』って
言えるものが欲しくて…

そういう自分で
目の前に立ちたくて


…でも
夢が叶うのは
いつになるか…わからない…


だから私なんか忘れて
淳には…
幸せになって欲しかった


だから最後に
お別れ…言った……

……私…」






− アズだ −






俺は その場に しゃがみ込んだ






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