アズライト



到着した、二階建ての日本家屋

良く手入れされた庭木も二月の今は
まだ雪のオブジェに隠されている

池は凍っていた


門を開くと銀色の毛並みが飛び出して来る


「ジョン!」

倒れんばかりに懐いて来るこいつは
昔ジッチャが趣味で貰って来た狼犬だ


服をめちゃくちゃにされないうちに
ジャーキーを与えて先に進む


鍵はかかっていないが優がいるんだろう
平日だけど



古い家にありがちな広い玄関
俺は居間に向かわずに二階へと上がった


微かにゲームの様なBGMが聞こえる
…マリオじゃねえな



襖を軽く叩いたが返事がない

「おーい!優!」

ガラっと勢いよくあけると
案の定、優はPCの前


「兄ちゃん ごめ
今冒険中で敵と戦ってるんだ
ちょっと待ってて!」


一瞬振り向いて
また画面に顔をもどしたが
予想外の嬉しそうな顔に驚いた

フィギュアやポスターに埋め尽くされた部屋を見回し、弟の背後に回る


「これ土産

…17にもなって何冒険とか言ってんのよ」

ニヤッとしながら声をかけるも
優は手元を忙しそうに動かしながら真剣だ



画面から歓声があがる

拍手の音にびっくりして
まじまじと優がやっている冒険とやらを観察することにした



性別や種族は様々

中世風の衣装のキャラクターが
本物の景色とみまごう程
綺麗な場所で動いている


剣や魔法が光り
巨大なモンスターは
数十分後にやっと倒された



優がキーボードを打ったすぐに
小さな魔法使いが
『うわぁい☆』と幼い歓声をあげた



「これお前かあ?!」

「え? う うん」

少し照れ臭そうに
また優の意識は画面へと向けられた




OWL『おめでとう!』
FeeL『おめでとユウ!』
ken『LevelUpおめ!!』
You「みんなありがとう☆ユウうれしいよっ!(っ_<。」
Maash『ユウたんの補助のおかげで勝てたんだって!
やっぱユウたんサイコー!』



(…こいつ自分が今どれぐらいニヤニヤしてるかわかってねえんだろうな







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