桃太郎【Gulen】
鬼ヶ島
その日は、とても天気のいい日だった。
空には雲ひとつなく、太陽はさんさんと照りつけ、まさに長きに渡った冬があけ、春の芽吹きを感じるような陽気だった。
「出雲王よ。今年は、不作だと思うか?」
旅支度を整え、いざ決戦と向かう前に、出雲王にどうしても尋ねなければならなかった。
「鬼がいる以上、それはやむおえないでしょう。」
・・・・・・そうか。
「ここに来る途中に仙人にあった。」
「仙人・・・ですか?」
出雲王が不思議な表情を浮かべる。
「仙人様のいうコトには、雨は必ずやみ、飢饉は毎年は起こらない。天災とていつかは遠のく・・・らしい。」
「ですが、鬼がいる以上は・・・。」
「私の父は鬼の存在など、毛頭信じておらんかったよ。もし、鬼がいるとしたら、それは鬼の名を借りた何者かだ・・・私たちは、そいつを退治してこよう。だから、このような陽気のいい日に、家に篭るようなことをするな。今日は絶好の種まき日和ぞ。美味い魚も取れよう。」
多少のウソ。
それでも国が潤うには時にウソが必要なこともある。
「ありがとうございます。」
再度、深々と一礼をする出雲王。
「息災にな。」
それを笑顔で返した。