Memory's Piece


いつもは結んでいる髪をバサリと落として、ボクは微かに微笑んだ。

艶やかに見えるように。


「じゃ、ばーい」


鬱陶しい唸り声を出す人山に背を向けて去る。

・・・つもりだった。

一旦着替えなきゃなーとか血まみれな身体を見下ろして思っていたボクはふと感じた気配に身を固くした。

突然現れたソレは身を固くしたボクを面白そうに見つめてくる。

感情の篭らない瞳で。


「お元気そうで安心しましたわ」


神経を逆なでする笑みを含んだ声にボクはゾワゾワッと身体中の毛を逆立てた。

もう一生会うことはないと思っていたのに。

黙り込むボクに満足したのか


「今日は顔を見せにきただけなの。」


皮肉を覗かせクスクスと彼女は笑う。

頭のなかに反響する声は呪いのように身体に刻まれる。


「だから、またお会いしましょう?お姉様。」


クルリと背を向け日も照らないビルの陰でも日傘をさしながら歩く彼女を睨むように見つめてボクは小さく唸るようにしてその名を呼んだ。

それは嫌悪の対象の名前。

何も知らず何も見ずに生きてきた無垢な妹。

呼ぶこともないと思っていた呪わしい名前。





「夕妃・・・・・・・っ!!」


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