将棋少女



「……今日。クラスメートに香歩さんを紹介してくれ。って言われました」


「ふぅん」


さして、興味がある風でもなく僕に先手を促す。


「そんなの初めてでもないわ」


「でしょうね。香歩さんなら」


僕の先手。


初手はいつもと変わらない。


7六歩。


至極一般的な初手だ。


『角行』を生かす最善の手。


「ついでに、うらやましい。って言われました。僕がです」


「うらやましい。……ね」


返す香歩さんの初手は3四歩。


『角』交換の構えだ。


けれど先手『角』交換は、将棋という微細な損得勘定で勝敗を決するゲームにおいて良い選択肢ではない。


定石通りここは6六歩。


香歩さんは7四歩。


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