恋するキモチ
男を連れて署に戻り、事情聴取をする。
杉本に投げ飛ばされて観念したのか、男は素直に白状して言った。

もともと通っていたジムで、付き合っていた女性がいたこと。
その女性を、被害者に奪われてしまったこと。
全てを忘れるために、昔やっていた素振りをしようとバットを持って公園へ向かっているところで、別の女性と一緒にいる被害者を発見し、問い詰め、口論となり、かっとなって殴ってしまったこと。

「…今回はお手柄だったな」

調書を一生懸命に書いている杉本に声をかけると、杉本はバッと顔をあげて、真っ赤な顔をして小さく頷いた。

「あ…ありがとうございます」

その表情が妙に可愛く見えて、思わず目をそらした。

「いや、事件の早期解決になってよかった」

そういって、杉本の隣の席に座った。

「書き方、わかるか?」

聞かれて杉本ははい、と頷く。


暫く、杉本のボールペンの音だけがカリカリと辺りに響いていた。

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