心の距離
「あ、田辺さん、一昨日の報告書なんですけど…」

自分のデスクに向かいながら告げてくる彼女。

いつもと同じ行動をする彼女に、寂しさが襲いかかってきた。

何も気にしていないのか、平然と話を続ける彼女。

自分は夢と割り切れて居ないのに、彼女は夢と割り切っているように思えた。

「わかりました。ありがとうございます!」

ニッコリと笑いながら告げてくる彼女の瞳。

腫れているのを誤魔化すように、濃いめに塗られたピンクのアイシャドウが、悲しい現実を物語っていた。

「瞬、ことみちゃんに携帯の番号教えておけよ。記入漏れがあった時、連絡着かないと仕事にならないだろ?」

さっきとは正反対の、さり気ない社長の言葉。

…明々後日には居なくなるじゃん…

本音を飲み込み、代わりに出た言葉。

「…後で教えます」

「私の携帯番号、先に教えておきますね」

笑顔で言いながら、小さな紙に番号を書く彼女。

受け取らない訳にもいかず、黙ったまま紙を受け取り、事務所を後にした。

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