反面LOVERS
さすがはわが娘……技に磨きがかかってるな」

うんうん、と感慨深げに唸る父ちゃん。そろそろキレるぞ。
現代の若者はキレやすいのよ。

「誰のせいだと思ってんのよ。とにかく着替えるから出てって」
「香澄……椿は立派な格闘家に成長したぞ。お前も天国から温かく見守って……ふぐぉあ!」
「出てけええええ!」

足蹴にされて「ひどい! 父ちゃん泣いちゃうぞ!」とか喚く父ちゃんを部屋から引きずり出し、疲れきった気持で真新しい制服に着替えた。

薄紅色のリボンを結び、私は思わずにやにやしてしまった。

うん、流石は近所で可愛いと評判の制服だ。
これを着るのが楽しみだったんだよねー。だから無理して隣の学区まで受験しに行っちゃったし。

朝は最悪の目覚めだったけど、すっかり私の機嫌は直っていた。
階下に降りると、フライパン片手の涼兄が「おはよ」とできたてのベーコンエッグを差し出してくれた。

「朝から相変わらず騒がしいなお前らは。準備はできたのか?」
「それはそこでいじけてる父ちゃんにでも言ってくれる? 準備はオッケーだよ」
「まあ、気をつけて行ってこいよ」

呆れた様子の涼兄はエプロンを脱ぐと、グレーのパーカーを羽織って、バイクのキーを手にした。
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