たとえばそれが始まりだったとして


“桐原君と付き合ってるの?”

そう訊かれるのは今回が初めてではない。

この一週間、何度か同じ類の質問をされた。
桐原君とは門をくぐってすぐにわかれるから、それほど多くの生徒に目撃されるわけじゃない。だけど今みたいに偶然自分の目で見てしまった子には、クラスを問わずに訊ねられた。時にはしつこいくらいに。それだけ桐原君が人気者ってことなんだろうけど、なぜ本人じゃなく私のとこに来るのか解りかねる。

校内での桐原君との接触は皆無に等しいから噂になるようなことはないと思うけど、このまま目撃者が増えたらそれも絶対とは言えなくなる。

ま、何を言われたところで桐原君との登校を止めるつもりは微塵もない。あんな穏やかな時間を失ってはたまらない。


まだ一週間しか経っていないのに、自分でも驚く程私はすでに朝の三十分が待ち遠しくて仕方がなくなっていたのだった。


< 32 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop