僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「なんでそんなに薄着なの」

「温めてもらおうと思って」

「……ああ、今日だっけ。颯輔さんが来るの」


返事の代わりに抱き付くと、煙草の匂いに混じって薬品の匂いが微かに鼻を掠める。


「母親は? 来るの?」

「来ないよ。電話では話したけど、パパにすら来てほしくな……」


頭を撫でられて顔を上げると、頬に温もりと、あたしの言葉を遮る唇の感触。


すぐに腰から首へと腕を回して、貪るように舌を絡ませた。あたしの腰を厭らしく撫でる手に、体温が上昇する。


「……ん……ふふっ、ここでする?」

「颯輔さんに会う前に俺とセックスなんてしていいの? バレるんじゃない?」

「……こんなにしといて、よく言う」

「っ! ……の、バカ」


盛上った欲望をズボンの上から撫で上げると、面白いくらいに反応する。


撫でて、緩く揉んで、快感から逃れなくすればもう、意地悪い瞳は情欲を孕んだ。


ベルトにかけた手は止められ、ピピッとロック解除の音が耳に入った次の瞬間、腕を引っ張られ、後部座席に押し込まれる。


バンッと閉まった音に、あたしはゆっくりと振り返り口の端を上げた。


「車の中でするの?」

「残念ながら、青カンは趣味じゃないからね」


まあ、車の中は狭さも寒さも感じさせないからいいけど。ローファーは脱いだほうがいいかと考えていると、伸びて来る手。


「お願いしてくれれば、全部脱がすよ?」

「……誰に?」


クイッと持ち上げられた顎。あたしが笑うと、もっと意地悪な笑顔が返ってくる。


「サヤお願い、って?」


つくづく変態だ。どうしてそういうことを言わせたがるのか。
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