僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ

星降る夜に冀う



◆Side:凪


大人っぽいと言われるのが嫌い。

今は亡きママに似てきたと言われるのはもっと嫌い。


大人っぽくても、ママに似てきても、サヤはあたしではなく緑夏ちゃんを選んだのだから。


サヤは緑夏ちゃんの中身に惹かれたんだって分かっていても、悔しかった。


本当はサヤ好みの外見で在りたかったけど、中学の頃からメイクを覚えて髪も染めた。


マスカラもアイラインもチークもグロスも、自分を派手に見せるためのものでしかない。


緑夏ちゃんにもママにも似ないように、真逆であるように。


あたしは他の誰でもない凪だと、主張したかった。


それだけだったはずなのに、心のどこかでサヤの男の部分が揺らいでくれないかと思っていた。


年齢の割に大人っぽいと言われる顔に。何人もの男が抱き続けたこの肢体に。


そんなものは背伸びしてるだけで、子供が色付いただけなのに。


詰まる所あたしのサヤへの想いはそれと同等、もしくはそれ以上のくだらないものでしかないんだ。


――そう思い込めたら、よかった。




「凪ーーっ!!」


見上げていた灰色の空から視線を逸らし、口の端を上げて振り返る。


この街もみんなも、笑えるくらい何も変わっていない。


車が行き交う大通りに面して立ち並ぶコンビニや路面店。この辺り一帯の行き先を表示する地図看板。学校帰りの学生が並ぶバス停。


暇を持て余してうろつく学生たちと、それらを眺めて立ち止まるあたしは、なんら変わりはないだろうに。


どうしてこんなに懐かしく、虚しくなるのか。


たった8ヵ月離れた街はもう過去になって、どこか余所よそしく感じる。


駆け寄って距離を詰めてくる中学の同級生たち。そのどれもが笑顔で、手を振る子もいれば、何がそんなに嬉しいのか両手を広げてくる子もいた。


「……久しぶり、みんな」


聞こえるはずがないのに、あたしは小さく呟いた。自分から1歩も動かず、笑顔だけを浮かべて。

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