僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


……幸せは作るものだと思っていた。だから壊れるものだと思っていた。


作るのではなく感じるものだと思うようになったのは、壊れたのではなく見失っていただけだと気付いたのは、多分、最近のこと。


自分が選び、築いた毎日の中に潜む幸せを、ひとつも見逃さないようにするのは困難だ。


当たり前に慣れた毎日は変化に乏しく、時に憂鬱にさえさせる。


けれどそれを知ってるから、ふとした瞬間に思い出せればいいと思ったんだ。



701号室の前に立ち、取っ手に手をかける。簡単に開いたドアの先には、左右キチンとそろえられたり、無造作に脱ぎ捨てられたローファーやスニーカーがあった。


あたしはパンプスを脱いで、リビングへ一直線。


話声が聞こえる。
人影が見える。


ドアを開けると、あたしの姿を確認した瞳が柔く細められた。



「おかえりっ」



とりあえずあたしは晴れていたら幸せだし、ご飯が好物だったら幸せだし、ふかふかの布団で寝られたら幸せ。


友達や家族と過ごす時間があって、笑っていられたらもっと幸せ。



今でも自分に自信はない。


上手な生き方だって分からない。


でも今の自分は、嫌いじゃない。



「ただいま!」



自分のゴールさえ見えないけど。


だけどきっと、歩いていける距離。



.
< 756 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop