空をなくしたその先に
憮然として、ビクトールはサラのつきだした紙を受け取った。

戦闘機に乗るのは好きだ、好きだった。

戦闘時のめまいのするような何ともいえない高揚した気分。

思うとおりに機体をあやつり、敵を撃破する。

それだけで満足だった。
もう少し若かった頃は。

一族をたばねる今となっては、それにともなう損害を考えざるを得ない。

どんな勝ち戦であろうとも、こちらの損害もゼロというわけにはいかない。

たとえ、空では最強に限りなく近いと言われる傭兵団を率いていたとしても。

何人もの仲間を、部下を見送ってきた。

だから、立てられた作戦計画には綿密に目を通す。

部隊間の連携がうまくいかなければ、どれだけ強力な艦を用いようが、すぐに負け戦に転落する。

サラもそれはわかっているはずだ。

< 104 / 564 >

この作品をシェア

pagetop