空をなくしたその先に
「ニース、その辺にしとけや。
そのお嬢さんにはかなわないってわかっているだろ」


スーツケースアタックをくらったグレンが忠告して、

ようやく二人の剣呑な空気がやわらげられる。

ほんの一瞬だけ。


「ダナ、これ以上騒ぎを起こさないでくれよ、頼むから」

「誰が原因でしたっけ?」


顎をつんとあげてそう言われてしまったら、ディオには返答のしようもない。

弟の首をつかんで先を行くグレンが、同情したような視線でディオを見た。

ディオの予想通り、二人は必要書類を持たずに結婚させてくれる司祭に心当たりがあった。

華やかな通りから二本ほど入った、ごちゃごちゃとした路地の一角。

そこの教会の司祭は、ディオの話を聞くと珍しくもないといった様子で
ごくごく事務的に式を執り行った。

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