空をなくしたその先に
「僕は」


言いだしかけて、ディオはためらった。

膝をついたまま、こちらを見上げているダナの顔。

ここ数日のことがぐるぐると頭の中を回る。

最初に顔を合わせた時の勝ち気な笑顔から、
たった一度だけ見せた涙、
側にいて欲しいと見上げられた時の表情まで。

口にしてしまえば、この関係は変わる。

ともに逃げ出した仲間から、主従へと。

できることならば告げたくない真実の名。


「僕の本当の名前は……ディオス・グレイス・シルヴァースト。

マグフィレットの……王位継承者だよ」


一瞬のためらいののち、早口に言葉に出す。

本当の自分の名前を。


「そんな……王位継承者……ああでもそんなことって」


うろたえた様子で、自分を見上げるダナに少し意地悪をしたくなってディオは言った。
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