空をなくしたその先に
「あたしが時間を稼ぐから、あんたは逃げなさい」


ディオの方を見ようともせず、ダナは言った。構えたナイフの先は、赤く染まっている。


「逃がしてたまるかよ」


腰からもう一本のナイフを抜きながら、男がうめいた。

動作がぎこちないのは、右腕をダナに刺されたからなのだろう。


「二人とも天国行きだ!」


ナイフを構えて男が襲いかかってくる。

ダナが動いた。

男のナイフをかわし、懐に飛びこんでナイフを突き上げようとする。


「遅いな!」


男の左腕がうなりをあげた。

ダナの頬に拳が綺麗に入る。


勢いで飛ばされて、ダナは頭から壁に叩きつけられた。

彼女のナイフが地面に落ちる。

ぐらぐらする頭を叱咤しながら、ダナはわめいた。


「逃げなさいって言ってるでしょ!」

「でもっ」


ダナはよろめきながら、もう一度ナイフを手に取る。
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