空をなくしたその先に

そこには壁に叩きつけられた時の傷がある。

首にくっきりと残る、男の指の跡。

殴られて腫れ上がった頬。

すべて彼の責任だ。

「……ディオが……無事で……よかった……」

腕の中でダナが微笑む。

よかったなんて、なぜ言えるのだろう。

全ての元凶はディオだというのに。

銃声を聞いてかけつけてきた警察に、
後のことを託してフレディはディオに言った。


「車を回す。
ディオ、お前は後ろの席だ」


やってきた車の後部座席にダナとともに押し込まれる。

運転手の隣の席に滑り込んで、フレディは運転手に行き先を命じた。

くったりとよりかかってくる身体を支えながら、

ディオは無力感に押しつぶされそうになっていた。
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