空をなくしたその先に
守られていることをようやく当然と受け入れる気持ちになって、ディオは自室のドアを開けた。

窓の側にある椅子に腰を落とす。

列車の窓枠に顎を乗せて、外を眺めてみた。

日はとっくに沈んでいて、柔らかな色合いの光が、
時折車窓を通り抜けていくだけだ。

その向こう側では、家族そろっての夕食か夕食後の団らんを楽しんでいる頃だ。

補給以外は停車なしで走り続けるから、当初の予定よりいくらかは短縮できるはずだ。

おそらく三日か四日でティレントに到着するのではないだろうか。

無事に帰り着いた時。

その時には。

重大な決断をせまられることになる。

ディオは窓枠においた腕に顔を埋めた。

探究心を悪いことだなんて、考えたこともなかった。

技術が進歩すれば、それだけ皆の生活が向上すると思っていたのに。

悔やんでみても始まらないと頭ではわかっていても、

これから先のことをあれこれと考え込んでしまう。
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