空をなくしたその先に
タイヤがききっと音をたてる。状況についていけなくなっていたディオは、乱暴にダナに引き倒された。


「何するんだよ!……わ!」


座席におしつけられ、ダナの膝の下敷きにされる。


「俺の個人的意見なんだけど。足固定するのにそれはどうかと思うよ、ダナ?」


運転席から後方を流し見て、ルッツが苦笑する。

「ちっさいことは気にしないで!」

「小さくないと思うけど!」


下敷きにされているディオの言葉には、誰も答えない。

ダナは、後生大事に持ち歩いていたゴーグルを腰から取り出して装着した。

目に風が入らない方がいい。

イレーヌの汽車から降りる時も、これだけはと部屋に取りに戻ったのだ。

手持ちの小型大砲の後部から弾を装填する彼女の口元を、交戦的な笑みがかすめた。

やるかやられるか、だ。それならやってやろうじゃないの。

頼りになるのは、わずかなエンジン音。

彼女が普段耳にしている戦闘機の音にくべるとはるかに小さいが、聞き逃すほどではない。

まず一台。

大砲が火をふいた。
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