空をなくしたその先に
「遅くなって申し訳ありません。お怪我……」


怪我の程度を確認しようとして、ビクトールは口を閉じた。

王族への最大限の礼をもってひざをついて見上げれば、自動車のライトでさえ確認できる明らかに暴行を加えられたあと。

ディオは、ビクトールを立たせながら言った。


「それよりダナたちが、敵をひきつけてくれているんだ。

彼女たちを頼むよ」


「わかりました。殿下はこのまま安全圏へ」


ビクトールは部下を呼び寄せて、ディオを避難させようとする。

ディオは首を横にふった。


「嫌だ」


即座に返したのは否の答え。


「しかし……」

「僕の従兄もいるんだ。迎えに行かなくちゃ」

「……わかりました」


ビクトールの決断に時間はかからなかった。

ここでぐずぐずしている暇はない。


「お連れしましょう。ただし車からはお出にならないように」


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