空をなくしたその先に
「雷神の剣、ね」


ダナは口の中で繰り返した。

確かに人間が扱うには、強大すぎる力だ。


「一度の出撃で撃てるのは十回までが無難ってことね?」

「気象条件によっては、もっと少なくなるかも」

「そう……」


外に出ると、フレディとイレーヌはまだ整備士と話しているようだった。

ディオは、赤と茶で塗装された戦闘機に目をやった。

使われているのが引き上げたダナの戦闘機から取り出したフォースダイトだと、彼女は知っている。

勝手に使ったことを、ダナは責めなかった。

両親の遺してくれた物だから大切にして欲しいと言っただけ。

雷神の剣が暴走する事態だけは避けなければ。


「ディオ?」


呼ばれて顔をあげる。


「大丈夫。

ビクトール様が、いい作戦考えてくれるもの。

きっと」


無条件の信頼が、ディオには痛かった。
< 427 / 564 >

この作品をシェア

pagetop