空をなくしたその先に
「殿下」

ビクトールは恨めしそうな視線で、黙ったままその場にいるディオを見た。

「こんな危険なことを殿下にやらせるなんて」

「僕にしかできないことだよ、ビクトール」


うめき声をあげて、ビクトールはテーブルの上に倒れ込んだ。

許可などできるものか。

そう言いたいのだが、宰相からも王子に従えと命令が届いている。

そして、国の最高権力者は軍の最高権力者でもあるのだ。

ビクトールに拒む権利はない。

契約を強制解除するという手もあるが、別のパイロットを見つけて出撃するだろう。


「ビクトール様、夜は?」

「夜襲か……」


夜間の飛行は昼間よりも危険をともなう。

特に夜目のきくパイロットばかりを選んだとしても。

「あたしは夜飛ぶのも慣れているし、ディオは目の前の計器さえ見えていれば問題ないでしょ」

殿下と呼べと言おうとしてビクトールはやめた。

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