空をなくしたその先に
扉を開いたのは、若い男だった。確かイネスと言ったか。

サラの部屋に入り浸っているライアンのことをよく思っていないであろうことは、扉を開けた瞬間の表情でよくわかった。

艦長室には他に二人の男がいた。ディランとハーヴェイ。
双子のようによく似た兄弟だ。ライアンには区別がつかない。
大きな机に何枚もの書類を広げて、サラは二人と熱心に話し込んでいた。

ライアンの訪れに気づいて顔をあげる。

目の下にはくまができていた。
アーティカを相手にするとあってよく眠れなかったのだろう。
大丈夫だろうか、とライアンはサラを気づかい、そんな自分に舌打ちする。

今はそんなことを考えている場合ではない。

艦は破壊されたが、人員の大多数は無傷で脱出に成功している。

艦を移動するだけではなく、彼らを基地まで送り戻す手配も整えなければならない。

ため息をついて、ライアンは机の上に命令書を載せた。
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