空をなくしたその先に
両手をあげてもう武器を持っていないことをしめすと、フレディから目を離さないまま、後ろ向きに安置所の外へと出る。


「そうしたら、そのまま下まで降りるんだ」


ディオは目を細めた。

血の気のひいた彼女の顔は、緊張の色を隠せないでいる。

ディオは、そのまま向きを変えて一歩一歩階段を降りていった。

ダナは自分の頭に向けられている銃を見上げていた。

もしこれがディオの方を向いたのなら、身体を投げ出してでも止める。

悲壮な決意を固めて。


何事もなくディオは階段の下までたどりついた。

ビクトールが彼をかばうように前に立つ。

何も言わないで出てきたというのに、どうして彼がここにいるのだろう。


「あなたに尾行をつけておいて正解でしたよ、殿下」

安置所をにらみつけ、ディオには視線も向けないままビクトールは言った。

「この間といい、今日といい、まったく無茶をなさる」

「無茶なんかじゃ……」


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