空をなくしたその先に
動くなと言われても、行くあてなどあるはずがない。

ディオのできるのは、
膝を抱えて座り込み、
ただ彼女の機体を見送るだけ。
さほど行かないうちに、機体は海に落下した。

暗闇の中でもそれとわかる激しい水しぶき。


「ダ……ダナ!ダナ!!」


声をあげるが、返事はない。

頭の中が真っ白になった。

動くなと言われたが、この場合は例外だろう。

慌ててブーツをふりはらうように脱いで、飛行服に手をかける。

苦労して上半身を脱いだところで、
何かがこちらに向かってくるのに気がついた。

波の間をぬってこちらに向かってくる赤い頭。

月の明かりで、それだけがくっきりとういて見えた。

泳いできたダナは、
手近な岩につかまって一息ついてから、

ディオのいるところまであがってきた。
< 90 / 564 >

この作品をシェア

pagetop