893〜ヤクザ〜
「あれ……あれれれ……(汗)」



回らない……。ひっくり返らない……。



普段、一丁28坪のタコ焼きなんて10秒もあればひっくり返せる腕にまでなっていたわしやのに、悪戦苦闘。



結局、鉄板一丁を焦がしてしまった。



後ろを見ると、若と数人の若い衆がゲラゲラ腹をかかえて笑っとった。



「お前、明日その鉄板ラード流して空焼きしとけよ〜。」



「はい……(泣)」



タコ焼きの鉄板は一度焦がしてしまうと、次に焼く時も生地が引っ付いてしまい焼けなくなる。

そんな時はラードをつぼの中にたっぷり浸かるまで流し込み、じっくり空焼きしないと元通りにならない。



「よぉ分かったか?卵抜きの生地はキツイやろ。親父はこれを普段やれ言うんやぞ。アホやで。」



「明日どうするんすか?」



「こっちが聞きたいわ!!親父がいる間だけ頑張って焼くしかない。」



頑張ってて……。無理や。あんなん焼ける訳がない。

また鉄板焦がしてしまう。

組長さんにド突かれへんやろか……。

でもまぁ若もいるし、何とかなるやろうと腹を決める事にした。
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