893〜ヤクザ〜
原田君の昇り龍
あれから約1年半が経ち、わしはタコ焼きのアルバイトを続けながら市川組にお世話になった。



時には姐さんの用事を手伝ったり、若い衆の人達に飲みに連れて行ってもらったり。

そして気付けば、家には帰る事も少なくなり、ほとんど組事務所で寝泊まりするようになっとった。



あの追跡事件のあと、組長さんと姐さんとでどんなやり取りがあったのか分からないが、組長さんは常に自宅には帰るようになっとった。



そしてちょうどこの頃からわしは、『極道』という世界に憧れはじめた。



数カ月に一度、組長さんは2人の若い衆を連れて神戸に本拠地を置く高田一家の本部当番に出かける。

普段はおちゃらけてる若い衆の人達も、この日だけはビシッとスーツを着て出かける。



これがかっこよかった。



(わしもヤクザなりたいなぁ……。いい服着て、いい車乗って毎晩飲みに行けたらどんな幸せか……。)



かなり前に、未成年は構成員にはなれないと本田君から聞いた事がある。



わしはこの時19歳やった。



なので誕生日がきたら組長さんに頼んでみようと心に決めた。
< 48 / 103 >

この作品をシェア

pagetop