虹色ハート

生後15日目

 鎮静剤は切れたものの、相変わらずむくみが酷くて動けません。
 今日もそんなアンナにママが話しかけてくれます。
「おはよう」
「頑張ってるね」
「つらいよね」
「苦しいよね」
「えらいぞ」
「負けるな」
 アンナはママの声援に応えました。
 痩せた手足の指を必死にちょこっとだけ動かしたんだ。

 そんなアンナの様子を見て、先生がママに話していました。
「普通この状態で体は動かせませんよ。鎮静剤が切れて少しでも動く事すら奇跡のようなものです」
「正直なところ僕はここまでむくみがひどく、あれほど悪い数値だった子が、こんなに回復するのを見た事がないです」
「多くは体内で出血したり、感染してしまったりして亡くなってしまいます。だから僕もアンナちゃんは初めての体験なので、ここから起こってくる出来事をひとつずつ的確に対処していくしかありません」
「アンナちゃんの生命力や気力、根性はすごいですよ。頑張りましょう」

 アンナに奇跡が起こっているんだ。
 まず、妊娠して産まれてきた奇跡。
 そして、病気がみつかって治療を受けれている奇跡。
 さらにその治療がこれほど病気にむしばまれている小さな体に効いてくれるのも奇跡。
 体が微動するのも奇跡。
 たくさんの管に繋がれながらも、この瞬間を生きている奇跡。
 命はいっぱいの奇跡の塊だね。

 むくみがひいてきたアンナは目を覆いたくなる程に痩せています。
 胸を見ていると心臓の動きと呼吸の間に肋骨がくっきり見えます。
 これはむくみがとれてきた証拠なのに、普通だったらオッパイをもらって太っていってるはずの赤ちゃんが、こんなにガリガリだから切ないです。
 2336gで産まれたアンナの体重は減少しておそらく2kgもありません。
 手術には体重も重要です。
 でも、今は負担になるから栄養ももらえない。

 悔しいけれど、生きるのって難しいな…。
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