美女の危険な香り
 代わりに千奈美のように若くて、金さえ積めば平気で体を許すような女と付き合い出した。


 俺は自分の休日、いかにも大企業の御曹司(おんぞうし)のように、若い女と寝るようになる。


 そうしているうちに優紀子の気持ちも俺から自然と離れていった。


 そして今井家も俺の代で終わるだろうなと腹のうちで思いながら、俺は愛人たちと派手に付き合う。


 それこそ、俺の世代はバブルが弾けてから幾分経って就職していて、まるで江戸時代の大奥のような生活をしている会社社長もいるにはいた。


 六本木ヒルズで過去の社の帳簿の粉飾決算をやらかし、東京地検に強制捜査に入られ、挙句自身も捕まったIT企業の社長のような感じだ。


 あの社長は頻(しき)りに言っていた。


「金さえあれば、人の心も買える」と。


 俺もあの男ほど極端ではないにしても、そういったことを思っていた。


 金を積めば女も自然と付いてくるというとんでもない間違いを覚えながら……。


 要はあの社長も俺も実際問題、世間を知らないという点では共通していたのだし……。

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