美女の危険な香り
第7章
     7
 ビル内へと入っていき、フロアを突っ切ってエレベーターホールまで行くと、常務の古雅が擦り寄ってきた。


 普段からろくに仕事らしい仕事はしないバカで、部下たちに仕事を丸投げしているこの男は俺から見ても――というか誰が見てもそうなのだが――、能無しだ。


 専務の高橋も近寄ってきて、


「社長、おはようございます」


 と言ってくる。


「ああ、おはよう」


「今日はお昼の三時前から社の定例会議が入っておりますので、ご出席願います」


「分かった。開始十五分ぐらい前に、社長室の固定に連絡入れてくれ」


「了解いたしました」


 俺は古雅も高橋も、どうせ仕事らしい仕事は一つもしないで威張っているのだから、性質(たち)が悪いと思っていた。


 二人とも先代社長の信太郎のときからいるので、簡単に首を切れない。
< 35 / 192 >

この作品をシェア

pagetop