折れない心

宝石箱

次の日にも、智幸さんはコンビニまで迎えに来た。




あたしは無言で車の助手席に乗った。




どこに行くかを聞くでもなく車は出発した。




「さっちゃん、疲れてる?」




「いや、そんなことないですよ」




智幸さんが、ちらちらと何度もあたしのほうを見ていたのはわかってた。




なんでだろう・・・


なんの会話をしていいのかもわからない。




「ならいいけど・・・」




車に乗っていて、自分が無口なことに気付いた。




あたしって、こんな喋らなかったっけ・・・




そう考えてるうちに、少し薄暗い埠頭に車は停まった。




「さっちゃん、
 やっぱ疲れてんじゃん」

智幸さんは、シートを少し倒し体をあたしのほうに向けた。




「大丈夫?」

頭をポンッとされた。




たったその仕草一つで、あたしは我に返った。




那抖・・・




あたし那抖でなきゃ。




だめなんだ。




智幸さんが頭を撫でて、肩に手を回そうとした。




「やっ!」

あたしは、とっさに智幸さんの体を押し退け、車から飛び出した。




「さっちゃん・・・さっちゃん!
      どこ行くんだよ!」




智幸さんごめんなさい。




あたしが好きなのは、やっぱり那抖なんだ。




誰かを想うことで、薄らぐなんて思ってたのによけいわかっちゃったよ。




那抖に会いたい・・・
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