窓に影2

 それでも、私は素直になれない天邪鬼。

「はぁ? なんでそんなに偉そうなの?」

 離れていかないでよ。

 暗くて顔もよく見えないじゃない。

 立ち上がって傍に寄ると、歩は昨夜のような色っぽい顔をしていた。

「照れくさいからだよ」

 低くて甘い声。

 私が聞きたかった、体中に響く声。

「やり直し。そんなんじゃ、素直にうんって言えない」

 甘い水に誘われるように、私は歩の胸にうずまった。

 歩の鼓動が聞こえる。

 鼓動を聞く耳から自分のも聞こえる。

 何、これ。

 どっちも速すぎて、わけわかんない音。

「恵里」

 反対の耳で、歩の声をキャッチする。

「好きだよ」

「うん」

「だから、俺の彼女に……なってくれる?」

「うん。なる」

 天邪鬼が素直になれた瞬間だった。


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