柘榴
「…ありがと」

「いえいえ」

けれどキシはアタシの肩を掴んだまま、歩く。

アタシは振りほどかないまま、歩く。

「…アタシと会わない間、何してたの?」

「気になります?」

「ええ、イヤな方向に」

「別に浮気なんてしてませんから、安心してください。あなた以外の人間なんて、物と変わらないんですから」

幸せそうに微笑み、アタシを抱き締める。

…こんなヤツを野放しにしていた責任は、やっぱりアタシにあるんだろうな。

思わずニンニク臭いため息を吐いた。
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