甘い魔法―先生とあたしの恋―


あたしはゆっくりと手を伸ばして、先生の指輪に触れる。

夏の気温のせいか、先生の体温を保ったままの指輪。

蛍光灯の光を受けて、手の平の上で指輪が光る。


「やろうか、それ」

「え……」


先生の思いがけない言葉に、顔を上げて指輪を差し出す。


「いいよ。これ、ティファニーでしょ? 諒子が2万はするって言ってたよ?」

「詳しいな。確かにそれくらいした気がするけど……いいよ、おまえにやるから持っとけ」


先生は、あたしの差し出した手を包み込むようにして手の平の指輪を握らせる。

しばらく握ったままの手を見ていたけど……もう一度その手を先生に差し出した。


「やっぱり先生が持ってて。っていうか、はめてて。

今まで通りつけてて」

「なんで?」


先生が不思議そうにあたしを見るから、これから言おうとしてる言葉が恥ずかしくて、少し俯く。


「だって……本当に彼女ができたんだから。

他の女の子が近づかないように……」


俯きながらも、顔は真っ赤だったと思う。

急に熱くなった頬がそれを伝えてた。


そんなあたしに先生は小さく笑って……手の平から指輪を取った。


「了解。彼女以外には近づかせないように努力します」

「……それ、絶対無理だし」


指輪を薬指にはめながら言う先生に、苦笑いを零す。


きちんと元の位置に収まった先生の薬指の指輪。

だけど……今までと大きく意味の違う、指輪。


それが、すごく嬉しくて自然と笑みが零れた。


初めて部屋に入った先生に、緊張してドキドキしながらも、ずっと嬉しくて仕方なくて……。

そう感じていたのに意地を張ってばかりの可愛くない自分がやりきれなかった。


そんなあたしに優しく笑いかけてくれる先生が、好きで好きで仕方なくて。


胸が、押しつぶされそうなほどに締め付けられて、苦しかった。





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