甘い魔法―先生とあたしの恋―


「じゃあ、とりあえずコレあてとけ」


そう言って渡されたのは、さっきももらったゼリーだった。


「さっきやったのはまだ冷えてねぇから」

「……」


渡されたゼリーは確かによく冷えていて。

あたしは赤い椅子に座って、言われた通り頬にそれをあてる。


「……気持ちいい」


熱を持った頬が、静かに冷えていく。


漏らした言葉に、矢野は一瞬だけあたしを見て……笑顔を浮かべた。

矢野の優しい笑顔に照れくさくなって、あたしはそっけなく目を逸らす。


「……マスカット味? 確かさっきのもそうじゃなかった?」


逸らした先にあった、ゼリーのラベルに、首を傾げる。

5種類のミネラルの説明やカロリーの数字が並んでいる横に、黄緑色で書かれた「マスカット味」の文字が目を引いた。


「ああ、マスカット味が一番好きなんだ。

色々比べたけど、これが一番うまいな」

「……」

「……なんだよ、おまえ」


自信満々に言う矢野がやけに子供っぽくて。

あたしは込み上げてきた笑みをそのまま逃がす。


熱いんだか冷たいんだか、よく分からない頬がじんじんしていて、少し腫れている内頬が口の中に違和感を残す。



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