私、海が見たい

聡の横を走りぬけようとした小学1年生の
男の子が、前につんのめり転んだ。


「あっ」 


綾の口からつい、声が出る。

聡も気がついて立ち止まり、
横でうつぶせになっている男の子を
じっと見ていた。

綾も止まって、その子を見ている。

泣いてはいないし、けがもなさそうだ。


「いてぇ」


子供は上体を起こすと、腰をおろして、
パンパンと手に付いた土を払った。

それから、痛そうに膝をなでたが、
少し擦りむいた程度で、
血は出ていないようだった。


「あらら」 


近くにいた同じクラスの涼子が、
駆け寄って、子供を立たせてやる。

「大丈夫?」
< 2 / 171 >

この作品をシェア

pagetop