【いちご塾】
あの日の朝、私は 母と口論し、衝動的に 家を飛び出した…。

宛もなく駅に向ったが、一枚のポスターに目を留めた。
【鎌倉へ**電】
「ん‥!!」


小田急線に乗り、藤沢に着く迄、私は一人の世界にいた…。

藤沢で、足早に乗り換えをし、座席に座る。

二両編成の車両。
ガタン ガタンと 横揺れリズムに合わせ、ブラ〜ン ブラ〜ンと揺れる吊り革…妙に滑稽で、さっき迄 強ばっていた頬が弛み、吹き出しそうになった‥。

車内を見渡すと、平日のせいか乗客は少ない。

合い向いに、小さな女の子が 窓に額をくっつけ、チョコンと正座している。
隣の母親が、子供が落ちないように、小さなお尻を 片手でしっかりと 押さえていた。

「ママみてぇ〜。うみ ちれいぉ〜」

電車の音に負けない位の声で、はしゃぎはじめた。

私は席を立ち、扉の窓から外を眺めた。

真上から、無数の光線が 海面に注がれ、クリスタルのパズルを、はめ込んだ様な世界が広がっていた。
瞬時に 心の望遠レンズがズームアップし、それを連写する。
ギィイ――。
駅に着き、扉が開いた。

私は 魅了された景色に誘われ、電車を降りた。

ホームに立つと、潮風と小踊りする枯葉に 心が和む。静かに耳に届く波の音は、 癒しのメロディーを奏でていく…。
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