百涙千笑-ヒャクルイセンショウ-
年の越し方
あと少しで年があける。
除夜の鐘を聴く為に窓を開けようと立ち上がった。すると、腕を掴まれ彼の腕に包まれた。
「…離してよ。」
頬を膨らませ、軽く睨む。
彼は無表情のままだ。
「ね、離して。」
時計を見ると、あと23時59分。
窓、あけたいなぁ…なんて呑気に考えていたら視界が暗くなる。
そして唇に感じた彼の温もり。
離れようと彼の胸を力一杯押せば、離さない、と言わん許りに私の腰と頭にまわされた腕に力がはいる。
もちろん、キスをされたまま。
彼に力でかなう筈がない。
諦めて腕の力を抜いた。
すると唇は離され、彼は私に微笑む。
「あけましておめでとう。」
時計を見れば0時をすぎている。
「…おめでとう。」
「鼠年だけあって、チューで年越し」
そんな事を言いながら、彼はまた私にキスをした。
そうですか、なんて冷たい返事をしてみたが、彼に背中を向けた瞬間に笑いが込み上げてきた。
†+――――――――+†
自分でやっといて…
余裕な笑みを浮かべてるつもりで…
私の前には真っ赤な顔の貴方。
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