文章のおべんきょう
新築のアパートなどであれば、六畳間と
いえばきっちり六畳しかない。しかも
畳一枚の長さが百八十センチにとどか
ないのだが、この家では畳一枚の長さが
百九十六センチもある。

しかも部屋には箪笥置場と呼ばれる板敷
の部分が付き、床の間がつき、窓は出窓
だから、六畳の和室といっても一般アパ
ートの八畳間をしのぐ広さがあるのだ。

天井も平均的アパートの数値を大きく
上まわり、居間に至っては三百六十セン
チもある。電球を交換するとなると
ひと仕事になる。


・・なるほど、主人公の家など、話の
拠点になる家を書くときには、「ちょっ
と特殊だぞ」と思わせた方が面白いと
いうことかな?

そのためには、「平凡な家はどうか?」
ということを知っておかなければなりま
せん。

この場でいえば、普通の家は「六畳間は
きっちり六畳」で、「畳の長さは180
センチ以下」なわけですが、主人公たち
の家は広いので、

畳の長さは196センチ、板敷の部分と
床の間がつき、窓は出窓であるので広い、
のですね~。

天井も高くて、居間では360センチも
あるということで、「なるほど広いや」
と読者を数字で「納得」させにかかって
います。

たぶん作者はいろいろな資料を漁ったり
して、「そういう建築物も実際にある」
ということを確認しているのでしょう。

居間の電球を交換するのは、天井が高い
ので一仕事という、「生活の実感」を
書いてイメージを喚起するのも忘れま
せん。うまい!

ただ、ひとつ気になるのは、「三百六十
センチ」は僕には分かりにくい気がする
こと。僕は長い場合の長さをあまりセン
チで考えないし、漢数字よりもアラビア
数字の方が読みやすいので、

「三百六十センチ」は「3,6メートル」
と書いてくれた方がよかった。って、
誰も僕の好みなんか聞いてないよ?(笑)

でもま、漢字の効果というものもあって、
アラビア数字よりも漢数字の方が、
「重厚さ」や「古さ」が出る、ということ
もあるんでしょうね。
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