【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


『兄貴ーっ!
なんすか!その頭!!』


『るせぇ!
あんな奴に声掛けやがって!
このバカヤローがっ!

いいい、行くぞっ!』


二人のチンピラは這う様にして
その場から退散した。


『フォ―――――!』


チーフが勝利の雄叫びを
挙げている。


チーフ、あんたは…



ジェロニモかっ!



『大丈夫だったか?』


『う、うん…。』


恐かった…。

ホントは大丈夫じゃない。

チンピラも恐かったけど

チーフのその強さの方が
もっと恐かった。


だって今までオネェ言葉の
チーフしか知らないし、

さっきまで黄色い声で
褒めちぎってた人だし、

どちらかって言うと、
ヨワヨワなキャラを想像
してたし、


あんなにしなやかな手だし…


そんな人がカンフー映画の
ヒーローみたいになって
あっと言う間に…。



あ、あり得なーい!



アタシはムンクの叫びを
挙げたい気持ちになっていた。


『どこも怪我してないよな?
服も異常無しと…』


『うん‥。』


『エクステも大丈夫と…』


『うん…。』


アタシは頷く事しか
出来なくなってた。


何か言おうとすると
涙が出そうになるから…。


『変な所で
時間食っちゃったな。

気分変えて飲みに行くかあ!』


アッケラカンと何事も
無かったかの様にチーフが
サムアップしながら
ニッと笑う。



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