【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


チーフに背中を支えられながら
ハリウッドミラーのある
座席まで連行される‥


チーフの魔法の手が
あっと言う間にメイクを
剥がし


泣き腫らした瞼には
温冷タオルが交互に
当てられた。


『いい?
今から泣いたら
承知しないからねっ!』

そう言いながら
クリームファンデを
のせて行く。


真剣な眼差しで
アイカラーにマスカラ、
ルージュ‥

みるみるアタシの顔が
形成されてゆく‥


『さっ、出来たワ♪

最っ高~にイイ女じゃない?』


チーフは今、完成させた
アタシと言う名の作品を
美術館の絵画を見るみたいに
満足気に眺めてる。


鏡に映るアタシはまるで
別人みたいになってた。


す、凄いよチーフ!



『さ・て・と‥。

予約のお客さんも居ないし
麗子ちゃん、先に一旦
家に帰って駅の並びの
Cafe´で待ってて。

お店閉めたら直ぐに
行くから♪』


お会計を済ませ、
開いた手の平を胸の辺りで
小さく振り、見送るチーフに

愛想笑いを浮かべながら
アタシは白い店のドアを
抜けた。




< 4 / 83 >

この作品をシェア

pagetop