【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー



公園通りを抜けて、ひとり歩く


麗子の足取りは加速していた。


逢いたい


ただ逢いたい。


どんな顔で何を言って良いか
解らない。

ただ笑顔でいられたら
それでいい。


そんな事を思いながら
ヘアメイクスタジオを目指した


麗子はやっとの思いで店の前に
着いた…が、

既に店の灯かりは消えて
チーフが居る様子も無かった。


『帰っちゃったんだ…。』


灯りの消えた店の外観を見て
麗子は愕然としてその場に
立ち止まっていた。


もうどこにも行く場所が無い。


部屋に独りで居たくない。
携帯も無い…


楽しそうに、これから飲みに
行くのであろう団体が横を
行き過ぎる‥


こんな時にフラリと立ち寄れる
馴染みの店があったらどんなに
良かった事か…


馴染みの店‥


そうだ!


麗子は、トニーが隠れ家と
言っていたSaloonローハイドを
思い出した。


もしかしたら、そこにトニーが
居るかもしれない。

居なくとも部屋で過ごすよりは
マシなはず‥


麗子は昨日の記憶を辿りながら
店のあるビルを探した。


少し歩いてジュンちゃんの
ブティックを過ぎ、
靴屋さんを越えて更に歩き、
角を曲がった所にビルを
発見した。


富岡ビルヂング2F

[Saloonローハイド]

あった!



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