愛の手
冬間近なせいか、海の風がひんやりと冷たかった。
さすがに海に入ることは出来ずに、あたしは浜辺にあった流木に腰をおろした。
これから先、くる機会はなくなるだろうな。
「祐輔さんも、ありがとう。あたしのそばにいつもいてくれて」
「…いいえ、愛理さんのお世話役ですから」
いつものように笑ってるはずなのに、祐輔さんの笑顔も少しかたかった。
祐輔さんはめずらしくタバコの箱をとり出した。
「お嬢様、じゃなくなるんですから――…タバコ吸ってもイイですか?」
チラッと見せたタバコは、メンソールだった。
祐輔さんも吸う人だったんだ。
「あはは、イイよ」
そういうと、タバコに火をつけて口にくわえた。
「みんなあたしの前では吸わないでくれてたんだね」
いまさらになって気づいた、小さな気遣い。
「私たちがそうしたいと思ったから、禁煙してただけですよ」
優しいのは、浅葱組――…みんなだったんだね。