戦国桜話

胡蝶の惑う心



―葵side―


『術糸[じゅつし]!』


八神さんがいつもの様に、お札を手に挟んで口を開くと、糸が目の前の巨大な蜘蛛に纏わり付いた


蜘蛛は身動きがとれなくなり「うごぉぉ」とうめき声をあげる


『佐助!今のうちです!!』


『分かってるよ』


八神さんの言葉に佐助は答え、刀を構える


すでに佐助はこの巨大な蜘蛛・・・毒蜘蛛[どくぐも]と戦い、怪我をおっていた


心臓は定位置にあるのだが、この毒蜘蛛・・・巨大なくせして動きが早く、足が長い為、心臓まで近寄れない


なんとも迷惑な妖怪だ


『佐助!毒蜘蛛の下に入って心臓を攻撃した方がいいと思う!』


私は今にも、毒蜘蛛に飛び掛かって行きそうな佐助に呼び掛けた


その間にも八神さんの術糸が毒蜘蛛の力にぶちぶちとちぎられている


これは・・・八神さんの術が敗られるのも時間の問題みたい・・・


『佐助!急ぐのじゃ!!』


胡蝶が佐助に向かって叫ぶと、毒蜘蛛は胡蝶をたくさんある赤い目で一睨みし、口から胡蝶目掛けてドロッとした液体を吐き出した


しかし、毒蜘蛛の吐き出した液体は八神さんの術糸のせいで勢いが足らず、胡蝶の目の前に落ちる


その瞬間、液体が掛かった地面が煙を出しながら見るも無残に溶けていった


それを見た胡蝶の顔が青ざめていくのが見える










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